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バナラシは、牛と人間とその他動物とのるつぼである。リクシャー、オートリクシャー、バス、タクシー、人間がまったく自分の意志にしたがって動いている。
バナラシ一番の繁華街 ガートをでたところには観光客目当てのリクシャーが山のようにうなっている。
観光客目当てはふっかけてくるので、少し歩いて、路上で休んでいるようなリクシャーをねらうことにした。
交渉を有利に運ぶには数台のリクシャーがたむろしているようなところがベストである。
で、1台のリクシャーの脇でタバコをふかしている、いかにもやる気のなさそうなひょろひょろ背高おやじを見つけて、声をかけてみた。
英語がまったく通じない。ホテルの名前や通りの名前を連呼してみるが、だめ。発音が悪いのかと思ってなんどもいいなおしてみたが、単に知らないらしい。顔がちょっと間抜けだ。
うーん、さっき乗ったリクシャーのお兄ちゃんは少しぼったけど、明るくきびきびしていたのに、ターゲットを誤ったか?
半日、Laughing Budda 顔のガイドとしゃべって疲れたし、その後ホテルを抜け出してガートを歩いたあとで疲れていた私はちょっと焦った。ホテルまではゆうに5kmはある。歩けば小一時間はかかる。
。。。と次の手を考えあぐねていると、横から小さなおやじがでてきた。英語でどこに行くのか聞いてきた。一瞬助かったか?と思ったのはウソではない。とりあえずホテル名と通りの名前を告げると、おやじは場所はわかったらしく、Hindu
語で”やる気ないおやじ”をどやしている。一通り話し終わったところで、今度はこちらに向かってニッコリ「No
Problem.」! まずい、No Problem は Problem だ!と思った瞬間に、連発される
No Problem に持ち上げられてこちらはリクシャーに乗せられてしまった。
それで発車するのかと思い気や小おやじも横に乗り込んでくるではないか!「途中まで同じ道だから」
あー、やられた、と思ったが、いまさら仕方が無いし、リクシャーに乗れないことはないので、あきらめる。
乗り込んでからの開口一番「ぼく、バラモン」。「仕事はガートで朝から晩まで沐浴客のお世話」。あっそー。なにせ騒々しい街中をガタガタゴトゴト、リクシャーの上での会話なので、半分くらいはよく聞き取れない。「子供が3人。」「年は?」「2 boys 1 girl。奥さん。」小おやじの英会話力がはげてくる。3分の1くらいの行程をきたときに、いきなり”やるきないおやじ転じてはーはーよれよれおやじ”に止めるように声をかける。
いきなりリクシャーを降りるや、「この先がぼくの家。明日もガートにいるからまた明日ね。ホテルはこの先だから大丈夫」と手をふっていなくなってしまった。完全ただ乗りである。うーん、あっけにとられるとはこういうことをいうのかと改めて感心するばかりである。向うの方が合理主義では百歩も千歩も上を行っているではないか。感心してばかりはいられない、目の前のよれよれおやじに指令を出さねば。こっちの疲れた体に鞭打って、不安げなよれよれおやじをけしかけて、先に進む。よれよれリクシャーおやじは、行けども行けども目指すホテルが見つからないので、さらに不安になり車を止めて回りの人に聞いて回る。ほどなく親切な人に教えられて、ようやく目的地のホテルに到着。おやじも私もほっとため息をついたのだった。
しかし、あのバラモンはなにもんだったのだろうか。見事な無賃乗車であった。
★バナラシのリカちゃん
予想通り、飛行機は遅れた。
バナラシ空港の待合室で、ニューデリー行きのエア・インディアを待っている観光客の団体、個人客に混じって、”リカちゃん”はいた。
エンジのパンジャブを着て、大きなバックを足元に髪の毛をくるくるしている。なんといってもこの髪の毛が圧巻。いまどき、それもインドでピカピカの縦ロールである。待合室の中でも、ひときわ目立っていた。
髪を触るわ、足を組み替えるわ、かばんを開けたり閉めたりまったく落ち着きがない。お人形さん、リカちゃんがインドの空港にまぎれこんだふうにしかみえない。
こちらも暇をもてあましている身、暇にまかせて、ノートを取り出し、はげおやじや、いかつい警備員をスケッチをはじめたが、おやじばかり描いていてもつまらないので、斜め前に座っていた”リカちゃん”を描き始めた。
最初は気づかなかったリカちゃんも、必要な視線を感じたらしく、私のしぐさを観察した結果、どうやら自分がモデルになっているらしいと気が付いた。やーんはずかしい、といわんばかりに手で顔を覆うわ、きょろきょろするはでなんとも描きにくい。こちらも、縦ロールの髪なんて、幼稚園の頃のお星様キラリのお姫様マンガ以来描いたことがない上に、モデルが落ち着きがないとあっては、うまく描けるどころの騒ぎではない。
こちらが思案しているうちに、向うも暇なのだから、英語で声をかけてきた。
あとはお決まりの作品の品評会と自己紹介である。彼女はカシミール出身の21歳。大学を卒業して、政府系の観光推進の仕事をしている。仕事場はデリーだが、出張でバナラシにやってきた。もう1日いる予定だったが、仕事がはやくすんだのでデリーに戻るところだという。インドのビジネスマンは、書類の束をかばんに詰めて移動している。重そうでかわいそうなくらい。バナラシははじめてだというので、沐浴にいったか?と尋ねたら、「行きたかったけどとても一人では外にでられそうになかったので行ってない」、との返事。こっちは一人でうろうろしていたともいえず、「残念だね」と生返事をしておいた。そういう話をしているときも、きゃっきゃしていて、でもそれがさわやかなのである。似顔絵の裏に住所を書いて、隣にいたアメリカ人のおばあさんにツーショットの写真をとってもらい、そうこうしているうちに飛行機がきた。
乗り込んでからも、彼女が座席をかわってもらったらしく、結局となりに座って、星占いやらお菓子やら、男の子の話やらの話など女子高生のような話題でなぜかもりあがりながらデリーまでの空の旅はつづいたのだった。おしゃまで素直な明るいよい子であった。
やっぱりリカちゃんは縦ロールだけでなく、中身もリカちゃんだったということ。
マハラジャとアカシア
砂漠・乾燥地帯に強い植物は、アカシアだそうである。少しの水でも地底深くに根を張って育っていく。
よくアフリカのサバンナとかで、頭がつぶれた格好をした木がぽつんとたっている写真をみるが(ステレオタイプな)、あれである。
たしか、キリンの大好物である、と幼稚園のころに習ったような気がする。
ラジャスタンは、パキスタン国境周辺に広がるタール砂漠を抱える。砂は生き物、ここでも砂漠化の被害は深刻そうだ。
ラジャスタンといえばマハラジャ。こちらの感覚だと、マハラジャというのは中世に美女を侍らせ、低いカーストのやつを扱き使って贅沢三昧したというイメージであるが、現在もマハラジャはいる。まあ地方のご領主様健在なの
そのマハラジャ(どうもジョドプールのマハラジャらしい)は考えた。
「砂漠化しつつあるわがラジャスタンを緑で覆うにはどうしたらいいか?」
研究熱心だったのか、賢いお付きの者がいたのかは定かでないが、砂漠にはアカシアが一番と伝え聞いたらしい。
アカシアはアフリカ原産である。つまりインドにはもともとない植物である。
で、マハラジャはどうしたか?
大量のアカシアの種を購入し、空から、ヘリなり飛行機なりでアカシアの種を撒いた。
たしかにちょっと小高い丘にあがって見渡すと、見渡す限り緑に見える。
ラジャスタンのアカシアはまだ大木になっていないので、一見ブッシュである。なので、地上に戻ると、やぶの中を行進している状況になる。下手に道の端の方を歩くと、アカシアのドゲが痛い。
砂漠で生きるのは大変である。
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