>>>●<<<
____ ▲▲▲_____

Iceland / Greenland  

Part 2 Those Horses

  HeklaHestler ヘクラ火山の馬
 

HeklaHestler =ヘクラ火山の馬、というのが、このツアーエージェントの名前。JonとNicoleのネーミングだ。単純明快。気分爽快でいざ出発!?

Day 1: Prepare for the tour at the farm Austvadsholt. Before lunch course is set through meadows and lava fields, alongside Ranga River, passing the historical lava sheep-fold Landrettir and the last farms before the highlands. Overnight in a new lodge at Merkihvoll which is close to the river. 4-5 hours riding.


Ready!
Holding two spare horses at hand

5日間の長丁場なので、予備の馬を連れて行かねばならない。ということで、1人2頭づつ、引いていくことになった。引き馬しながらの乗馬ははじめて。それも一挙に2頭である。ひえー、大丈夫かあ、というのが最初のリアクション。なにしろ、アイスランドポニー(ポニーというと地元の人は怒る)に乗るのもはじめてである。どんな馬なのか、乗ってみないとわからない。
「いやあ、お客に2頭も引かせるのははじめてだ」とのこと。通常は、参加者の数が多いので、一人1頭だとか。2度目のひえー。そんなおまけはなくてもいいのにい。

で、次の疑問が、どうやって連れて行くのか?実際には、一番外側の馬の頭絡の片側から引き綱を出し、それを2頭目の胴にセットされた留め金に繋ぐ。で、3頭目に乗った乗り手が2頭目の手綱を片手に持ちつつ、自分の乗っている3頭目の手綱を捌くというもの。

.

さらなる難問は、どちら側に馬を持つか。しばし悩む。とりあえずやってみるということで、最初は右側に連れていく。が、どうもしっくりこない。午後から左側に変える。かならずしも利き手側がやりやすいわけではないらしい。
.

乗り進むに連れて、次の試練が待ち受けている。いつも一緒に群れている馬たちとはいえ、走る速度とかかならずしも相性がいいとは限らない。当然、よさげなペア、じゃないトリオで組み合わせてくれているはずなのだが、途中で機嫌の悪くなるやつとかいる。道が狭まったりと3頭が同時に通れるとは限らない。一番はじの馬は足場が安定しないところを通るはめになる。並んで通れなければ、引き綱をのばして、縦列編成に変更だ。
常に乗っている馬だけでなく、連れている馬の様子もみながら、全員(馬+人間)が一番楽になるように調整が必要。どこかのマネージメントコースの課題のよう。

とにもかくにも、馬を連れて、Farmlandを出発する。フェンスを開け閉めしながら、羊の囲い、馬の囲い、と通り抜けていく。まっ平らな土地ではないので、岩あり、小川あり、馬は軽快に早足で駆け抜けていく。動きは早いがあまり上下の揺れがなく、乗りやすい。

途中、岩の上で、雷鳥の群れを発見。馬がちょっと驚く。1頭が驚くと、他の2頭もおろおろするので、大変だ。「だめだと思ったら、早めに引き馬を放すこと。どうせ、そんなに遠くにはいかないから。」とのこと。安全第一というが、人間驚くと、藁をも掴む、ことはあっても、なかなか掴んだものを放すのはとっさには難しい。

昔、羊を囲ったという石の室を覗いた。溶岩の塊をブロック式に積み上げたドームで、大きさは3〜5mの直径。中は思ったより広い。ぎゅうぎゅうずめにすれば、羊の20頭くらいは入るだろう。今は使われていないとかで、天井が一部崩れかかっていた。

さらに進むと、そこには羊の区分け場所が。中央に10mくらいの円形のアリーナ、その周りに6、7のゲートがあり、それぞれ放射状の囲いに入れるようになっている。囲いは、さっきの羊の室と同じく、溶岩のブロック。積み方はわりとラフ。夏の間、ハイランドに放っていた羊を、秋に村中総出で集めてきて、ブランドの印に従って、この囲いでそれぞれの持ち主に分けるのだという。ここも、最後に使ったのが80年代後半。その後は、ヘクラ山の噴火のせいで、羊集めのルートが変ってしまい、使われなくなったという。使われなくなったものは、しだいに朽ちて、大地に帰る。

馬を囲いの1つにいれて、ランチタイム。昼ごはんは、朝、出発前に作ったサンドイッチと紙パックのジュース。草むらに座ると、馬より低い目線になる。馬がむしゃむしゃ、こちらを横目で見ながら、草を食む。Farmからついてきた犬が、足元で休んでいる。


食事が終わると、溶岩台地の入口に向けて出発だ。今度は幹線道路に沿って、すこしづつ上っていく。山が次第に近づいてくる。だんだん緑も減り、荒涼とした景色に変っていく。夕方、無事川辺にできた新しい山小屋に到着。所要時間4時間ほど。なにしろ初日。馬にも、鞍にも、大地にも、寒い天候にも慣れないので、思った以上に疲れたようだ。3日前までは35度近い東京にいたのが、こちらは10度以下。暖かいスープが、なによりおいしい。

Nicoleは用事があるとかで、夕飯後、Jonの車で送られて、自宅に帰っていった。


Nicole checking her horse
  Mt. Hekla - Landmannahellir
 
Day 2: Morning departure from Merkihvoll to the wilds, crossing a desert of ashes and the lava fields of Solvahraun, close to the famous volcano Hekla (last eruption 2000). Overnight in a lodge at Landmannahellir, where the farmers used to stay in the autumn when gathering their sheep in the mountains. 7-8 hours riding.

Crossing

いよいよハイランドへ。川を渡る。川底は、平らな岩で水深はそんなに深くない。しかし、流れは結構速い。馬たちは、平気のへいちゃらで渡っていく。
アイスランドの川は橋のかかっていないものが多い。トレッキングをするときなどは、当然川を渡らなければならない。雨が降ったり、暖かくて上流の氷河が溶けたりすると、増水する。渡り方に注意、という文句が、ガイドブックや、トレッキングコースの看板に必ず書いてある。川が上手に渡れなければ、先に進めないのだ。

川を渡ると、ヘクラ山のふもとに広がる溶岩の台地を進んでゆく。道は、だんだん火山灰の黒い灰で覆われてゆく。溶岩は新しく、ごつごつしている。2年前の噴火のときに、流れ出たものだ。道をはずれると、足元が安定しない。時折、この先のLandmanalaugerに向かう車やバスが通る道だが、できるだけ道に沿って進んでいく。車がくると、脇に避けるのだが、すでに側道のように馬や人が通れるくらいの幅の小道が車道の脇にできあがっている場所もある。

Ride goes on and on

後ろからトラックが近づいてきて、私の乗っていた馬”Bressy”が驚いて走り出そうとする。前にいたJonの馬達のところに突っ込んで落ち着かせる。風景も荒々しいが、なにか噴火のすさまじいエネルギーがそこに残っているかのように、落ち着かない場所だ。

トラックが通り過ぎたところで、突然雨が降り始める。サドルにつけていた雨具をはずして、ゴアテックスの上から被る。アイスランドの雨は上から降ってくるわけではない。風が強くて、横からも降ってくるのだ。ゴアテックスでも長時間の雨はきつい。ゴム製の分厚い、船乗りが使うような分厚いレインコートが必要だ。

雨の中、レインコートを着てしまうと、視界が狭まる。馬も心持ち速度を速めた!と思ったら、ランチタイムだった。馬を休ませる囲いが設えてある場所で、サンドイッチをほうばる。幸い、雨は小雨になり、直にやんだ。
 

昼からは、引き馬してきた馬達を放して、先に行かせる。目的地を馬が知っているから、放しても大丈夫だという。

自由になった左手。責任感から開放され、身軽になったせいか、景色が広がってきたせいか、なんだかとっても軽快だ。なんといっても、嬉しそうに先をいく馬達を追いかけながら進むのが楽しい。馬達の開放感がこちらにも伝わってくる。


On the road

自由になった馬の群れをみていると、それぞれの馬の行動から、それぞれの馬の性格が読み取れて面白い。すぐに道草を食おうと、おいしそうな草のところに駆け寄って、追いかけるこちらが来るまで、じっくり草を食べるやつ。先頭を行きたがるやつ。大きな道ではなく、すぐに横道を行きたがるやつ。おとなしく群れについていくやつ。
普通、トレッキングにいくときは、自由に走り回る馬と一緒ということはまずない。騎上には、人がいて御している。当然馬の動きも違うわけで、馬本来ののびやかさを目にすることはほとんどない。

ヘクラ山を過ぎると、少し山も穏やかになって、斜面には緑の草、上のほうに白い羊が小さなドットとして識別できるようになってくる。まわりの景色と、前を行く馬とを眺めながら、起伏のある道行きを大いに楽しんだ。


Landmannahellir from the top of the hill

2日目の宿営地Landmanahillir。
山小屋に泊まる。小さな小屋が数軒。私たちの小屋では、2段ベットで8人は泊まれる。あとで見た光景だが、この小屋、トラックに載せてそのまま移動できるらしい。(左写真中央が宿泊した小屋)ガスはプロパン。なかにストーブがあり、その上でお湯をわかして、調理に使う。到着するとすぐにお湯をわかしてコーヒー&ティータイム。


夕飯の準備の間に、裏山に上ってみた。斜面は火山性の礫なので、一足一足ずるずるっと滑ってゆく。遠くの山には、雪。峰の向うには氷河もあるという。風がどんどん雲を押し流していく。が風向きがくるくると変るらしく、さっきは西の方向に流れていった雲が、また戻ってきたりする。光の加減で大地が衣の色をどんどん変えてゆく。山の斜面には、這い蹲るようにはえた小さな花やコケ。川の脇の湿地には、コットン・フラワーが白い髭を冷たい風にたなびかせていた。

他にも乗馬トレッキングのグループがいて、馬囲いの中は、にわかに活気を帯びている。囲いのWireには、馬が逃げないように電流が流される。飼葉を食べ終わると、馬達は思い思いにたたずんで休憩タイム。


Overlooking the Horse pens

それにしてもアイスランドの馬はカラフルだ。毛並みの色も模様もさまざま。なんといっても、寒いので鬣や尻尾はふさふさ。前髪も長くて、金髪だったりすると、ちょっとヒッピー風というか、不良のアンちゃんのようでもある。

馬がじっとたっているとき、群れが同じ方向を向いて立っている。この場合、尻の方向が風上。室内からでも群れを見れば、風向きがわかる。


Don't disturb - Dinner time


夕食後、Jonに唄を歌ってもらう。乗馬の時に歌う歌だそうで、軽快なリズムのフォークソングだ。ちょうど、歌詞カードをKarinが持っていたので、みんなで覗き込む。アイスランド語には見慣れないアルファベットがあって、書かれた文字を見てもちーとも読めない。pの上が突き抜けたようなやつ(”th”と発音するらしい。)とか。子音らしきものがやたら連続する。デンマークの彼女は、当然読めるが音程が取れない。ドイツ系アメリカ人の彼女は、アイスランド2度目とかで、すでに歌も知っており、多少痞えるものの、なんとか”歌”になっている。

アイスランド語は、子音が舌の上で踊っているような不思議なサウンドだ。歌もなんとなメランコリックなメロディー。アイルランド民謡とも違う不思議な音色という印象だった。

歌詞を覚えるのはあきらめて、メロディーだけマスターする。ようやく暗くなったころ、歌いつかれた人たちは、風の子守歌を聞きながら寝袋に滑り込んだ。

  Landmannahellir - Landmanalaugar
 

Day 3: In the morning, ride through the Domadal Valley and alongside the magnificent lake Frostastadavatn, to Landmannalaugar - a beautiful setting of old craters, glaciers and colorful mountains. The afternoon will be at the client's leisure for exploring the surroundings or bathing in the natural open-air hot-water pool. Overnight in the mountain hut at Landmannalaugar.

朝、昨夜は雨がちだった空は、なんとか雲間から光が漏れてくるようになっていた。

今日は、トレッキングルートの出発点になっているLandmanalaugarに向かう。ハイランドを通って。
火山性の景色、山やカルデラ、溶岩、まるで魔法のように、風景が次々と変化し、曝け出される。

途中休憩したところは、そんなカルデラの湖のほとり。羊が白い点となって急斜面の上のほうに見えている。かつて、ここは過酷な試練の場だった。ハイランドに一人入り、生き延びること。標高500m〜600m、それでも北極圏に近いこの地では、夏でもせいぜい10度程度にしか気温があがらない。ましてや冬の寒さは尋常ではない。住むところも自分で設えなければならない。暖をとる手段、なんといっても食料の調達が大変だ。羊やヤギを仕留めるか、湖の魚を採るか。それでも生き延びてハイランドから降りてきた男を、みなは敬意をもって対応したという。

湖の中に小さな島、20m四方くらいの、が浮かんでいる。そこに昔、1人のHermitが住んでいたという。湖に魚を放ち、それを捕らえて食料としていたそうだ。なにを思ってそんなところに住むようになったのか。なにを考えて日々をすごしていたのか。

.
Camp Site and the Hot Spring River

Landmanalaugarは、溶岩流が押し寄せて、冷え固まって止まったそのふもとにある。溶岩台地の下から流れ出す川が、Hot Spring になっていて、少し流れだしたあたりがちょうどよい水温になっている。

Landmanalaugarはまた、トレッカーの集まる基地。大きな山小屋の周りに、lキャンプサイトがある。ここまでは四駆などの車で入ってくることができるので、バスでやってきて、トレッキングにでかける人たちや、車でやってきてキャンプする人たちで夏の間は混雑するという。

ほとんど人気のないところを進んできた後に、ここに到着すると、なんだかとっても人間くさすぎる。当然人も多いし、一挙に文明というか、日常生活感が戻ってくるのだ。山小屋も然り。シャワーもコインをいれると3分間お湯がでる仕組み。キャンプ場のわきには、バスを改造した売店やカフェまである。

 


JonのFarmの隣に住む母娘がバスで温泉に入りにきていた。日帰りである。レイキャビックからここまで1日2本のバスが走っており、ちょうど農場の側を通るのだ。7、8歳のその子は、自分の犬と一緒に私たちの出発を見送ってくれた子だ。ハイランドの荒野を馬で駆けたあとに、知り合いに出会うというのも不思議な気分だ。


山小屋に荷物を置いて、小一時間のトレッキングコースに出かける。高さ5mくらいの溶岩台地にまず上り、(ここで深呼吸) 溶岩が冷え固まった上をぽこぽこと歩く。

目の前に虹。「アイスランドの天候は15分おきに変わる。」ともいう。雨が降ったと思えば、すぐに止んだり。どこに行っても見事な虹にしばしば遭遇する。

天気の話題はどこに出かけても一番重要な話題だ。「アイスランドの天気は?」アイスランドを訪問したアメリカのジャーナリストがだした答えは、「アイスランドには天気はない。あるのはサンプルのみ。」 


Over the rainbow


Carpet of Cotton Flowers


Lava and Volcano

溶岩台地を抜けると、そこは、コットンフラワーの花畑。溶岩がせき止めた谷間一面に白い絨毯が敷かれている。

火山のせいか、山肌の色が赤、茶色、緑とさまざまな模様を描いている。


大地が呼吸している

 

さらに上っていくと、硫黄くさくなってくる。火山ガスを含んだ水蒸気があがっている。水蒸気がでるところは、色が黄白っぽくかわっている。近づくと結構、熱い。かつて、アイスランドの人たちは、この水蒸気のでるところでパンを蒸したという。


コケのむすまで
再び溶岩台地に降りてゆく。こちら側は湿気があるのか、コケがじっとりと生えている。このようにコケが生え、ごつごつとした岩肌をじわじわと丸めていく。何年も何十年も何百年もかけて。岩肌の隙間から、小さな花たちが必死に咲いている。

地球の奥底から吐き出された、新しい大地。

いろいろな国の人が、この大地の上を歩いている。小さな男の子が、家族に連れられて歩いていた。手にはステッキ、服装は上から下まで完全防備だ。お父さんとお母さんが荷物を背負って前を行く。その足元をきりっと見据えて、裸の山を上っていった。

キャンプサイトの前にはかなり川幅の広い川原が広がっている。TROUTが取れるというその水は冷たく、細かい砂で白く濁っている。浅い川底の砂は、赤、黄、黒の縞模様に。上流に、氷河を頂いた山が見える。雲が流れ、水が流れ、風が舞い、時がゆったりと流れていく。

散策のあとは、待ちに待った温泉だ。水深30cm程度の川が温泉プールになっている。。コットンフラワーの湿地にのびる木の廊下を30mほど進むと、そこに着替え用のデッキが設えてある。皆、水着を着て、川に入っている。川はデッキのちょっと先でせき止められていて、そのプールにつかりながら談笑している。川底は小石。人があまり入らないところでは、コケで滑っている。小石を拾って吟味したり、溶岩やコットンフラワーを眺めながらのんびり入る。目の前を鴨が4,5羽列を作って泳いでいく。鴨も温泉好きなのだろうか。

川面を冷たい風が流れているので、顔はヒンヤリ、体はほかほかしたところで、問題は温泉からでてから。さっさとジャケットをはおり、靴をもって、板の上を走って、シャワールームに駆け込む。1コインで3分間、お湯がでる。温泉といっても川でコケも流れてくるし、多少温泉くさいので、シャワーで体を流すのだ。温水のでるBasinでは、トレッカーが泥まみれになった洋服を洗濯している。隣の炊事場では、キャンパーがフリースやセーターを着て携帯コンロで夕飯の調理中だ。

夕飯は、Jonがあらかじめ頼んでおいてくれたTroutのホイル焼き。今朝とれたというTroutは絶品!たくさんありすぎて、残りは翌日ヨーグルトとまぜてサンドイッチの具になった。アイスランドで食べたもので一番おいしかった。大自然から授かったご馳走である。

山小屋は変則3階建て。それぞれの部屋で、宴がはじまる。1階の部屋では、歌声と笑声が遅くまで響いていた。
Always look on the bright side of life♪

  Landmanalauger - Back to Landmannahellir
 

Day 4: The morning is spent in further exploration of the area with a return to Landmannahellir via another route - a wild track previously known only to farmers. Traverse superb explosive craters such as Ljotipollur and Hnausapollur, then ride across expansive and unusual landscapes and by beautiful lakes. It will take approximately four hours to reach the mountain hut.

朝風呂にでかける。さすがにトレッカーは出発しているので、入っている人はほとんどいない。究極の贅沢。川底からふつふつと温水のバブルがあがってくる。


Jon and his horses

馬の支度をしてキャンプ地を後にする。残っていたトレッカーたちがカメラを向けてくる。どっちがTouristなんだか。昨日泊まったLandmanahillierに向けて別のルートから戻る。もっと長い8日間のトレッキングでは、戻りのルートではなく、この先に進んで、砂漠から氷河を眺めて、Hellaに戻る周遊ルートを行くそうだ。

これまでのなかでも風が一番強い。風を避けるかのように、山裾と溶岩の間の細い道を縫うようにして進む。戻りということで、馬を何頭かLandmanahillierに残してあるが、それでも1頭は引き馬をしなければならない。細い道では、引き綱を長くもって、馬が一列になれるように誘導する。

遠く湖を見渡す場所で休憩。毎日、乗る馬を替えているが、それでも2、3頭を順番に乗り換えているだけ。ということで、馬ともだんだんウマが合ってきたようだ。お互い性格がわかってくると、付き合いやすくなってくる。
山の斜面を登りはじめる。上るに連れて、コケなどの緑もなくなり、礫や砂ばかりとなってくる。あまりに急な場所では、馬から降りて、自分の足で登らなければならない。乗馬用の長靴なのと、登りは苦手とあって、馬のほうが足が速い。ぜいぜいいいながら登っていると、後ろからお尻を馬がぐんぐんと押してくる。押されたって、そうそう速く登れるってもんじゃない。


大地が迫ってくる。大地が傾いてくる。

風が次第に力を増す。
振り返ると、視界がぐんと開けて、周りの山々が
宙を舞い、迫ってくる。


Rider and the horse in the wind

登りきると、そこには大きなカルデラ湖だ。縁から湖面まで100m近くはあるだろうか。スケール感がまったく働かない。斜面は、赤茶けた大地が縞模様を作っている。水は真っ青。波立つ湖面が風の通り道を映し出す。
記念撮影もそこそこに、山を下る。どこに行っても風、風、風。
谷間に下りると、そこは砂地。一気に駆けるも、風と砂とで、ほとんど目を閉じたまま疾走する。

同じような山を登り、カルデラを眺め、また下り、駆け抜ける。


blow in the wind

繰り返しの道行が、妙な高揚感を誘う。

ある湖のほとりに辿り着く。キャンプ地の側の見覚えのある湖だ。ここで引き馬達を放つ。意気揚々と先を急ぐ馬達。だが、この先は急斜面が一気に湖に落ち込む崖っぷちの1本道だ。道幅は1フィート程。左手数m下は水面。右手は100mはあるだろう急斜面。そこここに羊の群れが草を食んでいる。道は曲がりくねり、アップダウンあり。途中に岩も突き出ていたりする。

高所恐怖症は、高さだけでなく、落ちることへの恐怖なのだ、と再認識しつつ、どうするんだあ、これ、と思っている間もなく、先行する馬を追うように、馬達は、羊たちを蹴散らしながら、でこぼこぐにゃぐにゃ道を駆けてゆく。こちらは、揺れる馬の背の上でしがみつきつつ祈るばかりだ。スリリングな体験はあっという間に完了して、馬達は、さらにスピードアップして、ゴールを目指す。フリーの馬達と群れて走るのは爽快。風を気って、一気にコーナーを曲がると、キャンプ地到着だ!

 

 

キャンプ地では、Nicoleと姪っ子、彼女のボーイフレンドが待っていた。姪っ子たちはフランスからバカンスにやってきて、一緒に乗馬する予定だったとか。が、彼女の妊娠がバカンス出発前に発覚。当然馬には乗れず、明日から車で搬送を手伝ってくれることになった。人数も増えて、その晩のごはんは言語も入り乱れてにぎやか。中ににぎやかさに比例するかのように、外はかなりの強風で小屋ごと大きく揺れることも。窓から外を見ると、馬たちは飼葉をもらって夕飯を済ませ、一箇所に固まってひたすら風除けである。

その晩、風はさらに強まった。皆が寝静まったころ、ふと気が付くと、暗闇にヘッドライトが光った。なんで今頃車が?といぶかっていると、その車は、馬の囲いの方へ動いていく。それは、Jonが風上に車を止めて、馬達の風除けにするためだったのだ。音もなく戻ってきたJonはベットにすっともぐりこんでいた。

夜更け、気配がして目が覚めた。風は相変わらずびゅーびゅーと吹いている。窓明かりで目をこらしてみたが、当然のごとく誰もいない。以前、ナバホのトレッキングツアーにいったときも荒野のテントで夜営しているときに、妙な気配を感じて眠れなかったことがあった。次の日、私の乗っていた馬が事故にあった。あの晩も風の強い夜だった。人は荒野にでると、感覚が研ぎ澄まされるのだろうか?その気配は、なんだかひどく友好的で、怖い感じはしなかったのので、そのまま眠りに戻っていった。

  Farewell to the Highland
 

Day 5: Ride through the highlands, crossing lava fields, toward Mt. Valafell to the Afangagil Valley, a special place where farmers get together in September for the "Rettir", after the sheep have been collected. Overnight in an old shepherd's hut.

5日目いよいよハイランドでの最後の日だ。昨日までのダイナミックな風景から、溶岩や砂漠といった荒涼とした風景に変る。ヘクラ山がまた視界に入ってくる。最後の噴火で流れた溶岩の跡がくっきりと見て取れる。

2年もたつと、麦のような草が砂漠の上に生え始めている。一番最初に根付く植物の1つだという。植生は次第に変っていて、土壌を肥やしていく。低木も地を這うように生えている。馬がぎしばしと肉厚の葉に食らい付く。

  ヘクラ山の溶岩流を抜けると、1kmの砂地を一気に駆け抜け、のぼりの斜面を駆け上がる。この峠を越えると、ハイランドともお別れだ。風が強烈に体をたたく。頂上で引いてきた2頭を放つ。反対側は砂地の急斜面。馬達はこれまた一気に駆け下りていく。乗馬している馬達を必死にスピードダウンさせて、砂が腹の近くまでくる中をゆっくりと降りていく。下界には、羊たちが群れているのが見える。盆地の向うには、氷河が光っている。

今日の宿泊は、羊飼いが羊を集めるときに泊まるという小屋だ。Turf屋根が3連になっている。1つはキッチン。残りの2つがベットとテーブルのある小屋だ。トイレは外。

秋になると、ハイランドに放牧していた羊を集めにやってくる。ハイランドでみた羊たちは、かなりの高みで生きていた。あの羊を集めて、農場に戻るのは大変な作業だ。馬だけでなく、牧羊犬を使って、縦横無尽に走り回らなければならない。一仕事終えて小屋に戻ったとき、暖かな食事と仲間とのおしゃべりや歌がある。なんという暖かさだろう。

 

 

午後、ハイランドにもう一瞥しようと、さっき降りてきた峠を登った。頂き付近は強風。雲が舞っている。ほんの少し越えてきただけなのに、すでに空気が違う。ハイランドのマジックは消えたのだ。

少し高度を下げて、斜面に寝転がる。手元には黄色い花。目の前には大地と空。雲が右に左に行進している。風の音。鳥が時折空を切る。手に取った溶岩の礫はとても軽い。礫や岩場の下に、薄い土壌に張り付いた緑のカーペット。羊と小さな花たちがある。太陽は見えないが、雲の上に確かな存在がある。大地がかすかに暖かい。

 

夕飯は、羊の脚の丸焼き。土の上に焼いた石を並べて、その上で蒸し焼きにするのだという。小屋に備え付けのノートに旅のコメントを思い思いに書き込んでいく。こうして1歩1歩、旅がおわりに近づいていく。
2段ベットの窓からは、Turf屋根の草が暗くなりつつある空にゆれている。明日は農場まで長い一日になりそうだ。

 

 

  Going Home Farm
 

Day 6: Depart from Afangagil early in the morning for the return to the farm. Ride across deserts of ash, passing through the 1970 lava flow. Then on through farmland and across the Ranga River toward home. This is a long day with six to eight hours in the saddle.

空が低い。雲が垂れ込めて、小雨が降っている。馬達は今日で帰れることを知っている。

これまで乗ってきた馬ではなく、別の馬をトライすることに。Trotがスムーズで揺れないやつだ。距離を稼がなければならないときに、Bumpyな馬だとかなりきつい。昨日馬の腹帯を締めるときに、背中が攣ったこともあり、大事をとる。

Farmlandに降りるまでは、溶岩の黒い砂地を抜けなければならない。途中からしだいに雨が強くなってきた。アイスランドの雨は縦にふらない。横からも斜めからも容赦なく降ってくる。まるで雲のなかで四方からシャワーをかけられているようだ。ここでは傘をさして歩いている人はいない。風が強く、雨のなかでさしてもほとんど役に立たないからだ。レインコートをしっかり着込み、顔にたたきつけてくる雨を耐えて、ひたすら進む。馬もけして走り安い天候ではないはず。だが、タフに黙々と1列になって前に進んでいく。途中大きな滝のところで一休み。行きにみたときより、水量ががぜん増えている。その後しばらくは道沿いに進む。次第に高度がさがってくると、雨もやみ、晴れ間がみえてくるようになった。

今日は、引き馬をせずに進んでいる。さっきまで、乗り手のいない馬達も雨のなかではおとなしく一列に進んでいたが、砂地を過ぎ、道脇に草が生えてくるようになると、さっそく道草がはじまった。後ろから、脇にそれた輩を追い立てながら、進んでいく。これが結構楽しい。晴れてきたこともあるのだろうが、馬と駆け引きしながらも、ずるがしこい馬達をまとめて一緒に走っていくだけで、だんだん愉快な気分になってくる。

あー、やってられねえ。

お昼を食べ、Farmlandに入ってくると、馬達が加速しはじめた。ところどころに柵があるので、どんなに先を急いでも、こちらが追いつくことはできるのだが、アップダウンもあるところを、ギャロップでずんずん行こうとする。自分の家が近づくと、道草も食わずに一目散だ。

ようやく最後のゲートをあけて、帰宅。空はすっかり晴れわたっていた。

Farmに帰宅。馬もリラックス。

Farmに到着すると、デンマーク人の彼女は、すぐにレイキャビックに戻っていった。次の日の朝の飛行機で帰国するために。残された2人は、のんびりした午後を過ごす。隣の農場の夫婦が、2頭の馬に乗って颯爽と登場、ゲートをあけて牧草地の向うに消えたかと思ったら、しばらくして、放牧していた馬を集めて戻ってきた。色とりどりの馬が20頭あまり、緑の絨毯の上を駆けてくる。豊かな恵みを感じさせる光景だった。


集団下校。

  ※あのLandmanalaugarのバスは、かつてKefravik空港の側に駐屯していた米軍のお下がりバスだという。

パート1 へ戻る

★★★

  Itinerary
Date
Destination
8/19
Mon
Hella ->
8/20
Tue
-> Landmannahellir
8/21
Wed
Landmannahellir-> Landmannalauger
8/22
Thu
Landmannalauger -> Landmannahellir
8/23
Fri
Landmannahellir ->
8/24
Sat
-> Hella

  Links


home

Copyright (C) 2002 oyoyo! All Rights Reserved